著者は、岐阜県に本社を構える
未来工業株式会社(電気設備資材メーカー・二部上場)のオーナーです。
労働時間が日本一短い会社として有名です。
社員本位のユニークな経営は、今の日本の会社に警笛を鳴らすものです。そして、付加価値の高い経営法は非常に勉強になります。その一部を紹介させていただきます。
・未来工業は、ドケチで有名だが、休みが日本一多い会社(有給休暇を除き年間140日)。社員の年間総労働時間は1640時間。
残業禁止。
仕事の持ち帰り禁止。タイムカードなし
・
経常利益率の低い会社の経営者に限って、安い賃金で、長時間働かせようとする
・1965年創業以来、赤字ゼロ。1985年から売上高も200億円を越え、2010年の経常利益率は15%。休みが多い割に、利益率の高い会社として知られる
・就業時間内に仕事を終わらせるのも、電気代の節約も、すべての社員に「
常に考える」クセをつけさせるのが目的
・社員は、常に考えているから、社長に何の相談もない。未来工業は「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」も禁止
・社内の蛍光灯は、引きひもスイッチが下がっている。自分の席を離れるときは、必ず蛍光灯を消すように義務づけられている。引きひもの先に管理すべき社員の名札が結ばれているのは、
当事者意識を植え付けるための仕掛け
・エレベーターの「閉」ボタンを押すのは厳禁(電力消費が損)、ドアノブ取り外し(回す
時間が損)、コピー機が330人いる本社に1台(コピー機の台数と仕事効率・業績向上との関係はない)など、普段見過ごしている
小さなムダをなくすのが「ドケチの道」
・ドケチとは、社員にコスト意識を植え付ける最良の教育。社員を
ドケチにすることが、社長の仕事。それぞれの業務の中で、どういう形で
ドケチを実践するのかは、社員の仕事
・大手問屋と取引しない。理由は簡単、販売手数料が15%と法外に高いから。売上200億円の会社に、200人の営業職がいて、全国に30ヵ所の営業拠点があっても、そんなに経費はかからない。自社営業と中小問屋への卸だけで、
身の丈にあった商売はできる
・会社のムダを本気でなくしたいのなら、社内をこまめに歩いて回り、社員の仕事ぶりを見ながら、「何かを見たら、必ず
損か得かと常に考える」「
社員の動きを徹底的に観察する」
・常識や慣習は疑ってみるべき。未来工業は、年間
140日の休日、
7時間15分という日本一短い労働時間。大手ハンバーガーチェーンのような名ばかり管理職も、派遣社員もパートもいない。
全員が正社員・残業禁止、タイムカードなし、自宅に持ち帰って仕事をすることも絶対禁止。こうなると、社員たちは逆の意味で大変。各自が目一杯仕事の効率を引き上げないと(常に考えるを実践しないと)、仕事が回らなくなる恐れが出てくる
・出張費は
渡し切り方式(宿泊費は1泊1万円、差額を小遣いにしても構わない。新幹線料金を夜間バスにしてもいい)自分の得になるから社員は必死で考える
・社長の仕事は、社員たちの不満だと思われることを、少しずつ消していくこと
・未来工業のプロ社員育成法は「3ナイ」主義。「
教育しない」「
管理しない」「
強制しない」これは、裏返せば、自分で考え、動き、その結果を自ら検証できること
・トップに対する「
勝手な気づかい」が知らないうちに積み重なり、いつの間にか「思考停止」に陥り、「トップの前例」を繰り返す。
前例主義という幽霊と組織の因縁を断つこと
・「他社と同じものはつくらない」「常に考える」の合言葉は、会社の生き残りをかけたもの
・命令も管理も禁止。上司は部下を説得した上で、社員を見守る。管理されるのを嫌がった人間でも、自分が管理職になると、間違いなく
管理したがる人間になる。人を信じる性善説と、信じられない性悪説は、ひとりの人間の表と裏にすぎない
・「教えていただいて、すぐにつくり直しました」。誰だって、自分の意見でよりよい製品ができたらうれしい。お客さんが喜ぶものに改善していけば、製品づくりに終わりがない
・数字上の「合理化」は、会社を蝕むことはあっても、会社を強くすることは断じてない。それは、会社が、やる気を起こしたり、失ったりする
人間の集合体だから
「こんな会社に就職したかった」と、つくづく思います。
日本人は、管理をしたがります。管理とは、部下を信用していない裏返しです。また、日本人は、一生懸命遅くまで働き、それを上司にアピールします。それは、上司が業績で部下を判断していないことを意味します。
このようなバカな上司がいるのは、バカなトップがいるからです。この悪循環が断ち切れなくて、日本の会社は苦しんでいるように思います。
バカなトップ、バカな上司を一掃して、このような賢い会社の制度を、若い社員たちが見習い始めたら、日本の会社に明るい未来が見えてくるのではないでしょうか。