田辺聖子さんの本を紹介するのは、「
上機嫌な言葉366日」「
女のおっさん箴言集」に次いで、3冊目です。
田辺聖子さんは、永遠の乙女ですから、幅広い女性に支持されています。老若問わず、女性の気持ちを知るのに最適です。本書にも、男性が教えられる箇所が数多くありました。その一部を紹介させていただきます。
・生きて、愛して、人生を楽しむこと、それが根本にあって、それを守るため、政治も法律もある。
お金も若さも美しさも、音楽も本もそのため。今はもうみんな、ひっくり返ってしまった。本末転倒になっている
・「まあ、こんなトコやな」は、大阪人の愛好する「しめくくり」あるいは
終結宣言で、キリのないことを切り上げるときに便利な言葉である。そこに、あきらめとか後悔とか腹立ちはなく、あっけらかんと風通しのいい客観的認識だけがある
・叱られる、怒られる、咎められる、責められることによって、人は、自分と
違う価値観、人生観に出会い、ビックリする。そのことで荒波に揉まれて、想像力が養われ、よりやさしくなる
・大阪では、職業上ではなく、性格上で、ツトメ人とショウバイ人を区別する。
ツトメ人とは、融通がきかず四角四面で、理屈の多い几帳面な人。
ショウバイ人とは、円転滑脱で、話がわかり、茶目っ気があり、そのくせ、老巧な駆け引きを得意とするような人
・客観視できるかどうかが、オトナ度の差といっていい。
客観視能力の未成熟な人は、悲観的戦況にヒステリー状態になり、キリキリ舞いして自滅する
・お化粧は
自分自身との対話。顔色から今日の健康状態がわかる。もし、昨日、不快なことがあっても、一夜眠れば、人間は復原力が強いから、イキイキと再生する
・誰しも、気持ちの通じ合いそうな予感のする人に会うことがある。そのとき、
条件を優先させるか、
予感を優先させるかは、その人の結婚観による
・
魅力というのは、神の与えてくれた天与のものと、自分の精神力、半々の混合
・起こってしまったことは元に戻せない。人の気持ちを変えることはできない。だから、「
そんなこともあるわな」と切ってしまったほうがいい。人生はそういうことの連続だし、それで済むようにするのが大人
・世の中は、「私、こうしたいの!こうさせて!絶対、こうでなきゃいや!」と
叫んだほうが得。「どっちでも構わない、本当はそうじゃなかったけど、まあ、いいです」なんて言っていたら永久にダメ、世間はこっちの気を察してくれるなんてことは全くない
・自らを助けんとして必死に戦い抜いても、浮かび上がることは容易ではない。「自ら助くる」にも限界がある。人生の終わりに及んで、「
天は自ら助くるものを叩く」と会得した
・別離のショックも悲しみも、忘れはしないけど、
薄れていく。時間は神様からの最高のお恵み
・「いささかは 苦労してますと 言いたいが 苦労が聞いたら 怒りよるやろ」。人生の苦労の底は深く、果てしない。私みたいな苦労ぐらい、誰でもしている
・
過ぎしことみな佳し。そう思わなきゃ、つらい世の中、生きていけない
・
話が弾むというのは、やはり、いちばんの夫婦の要諦
・人生の幸福というのは、人に憎まれず、敵を作らず、人に嫉まれるほどの幸運をむさぼらないこと。幸福は
こっそり味わうもの
・人生の達人というのは、自分からゴメンと
謝れる人だと思う
・この世の人生にも案外、
空くじはないかもしれない。全くいいことがなかった、なんて人はないだろう
・
達観というのは、心中、「まあ、こんなトコやな」とつぶやくこと
・上機嫌は、自分のものとしても大事だけど、人のものでも嬉しいし、大事にしてあげたい
本書を読んでいると、「
上機嫌と達観によって、人生を楽しむ」ことが幸福の本質であることがわかります。
人生を楽しまなければ損です。そのもとは、上機嫌の才能ではなく、上機嫌の努力なのかもしれません。