とは学

「・・・とは」の哲学

『世界経済の大潮流』水野和夫

世界経済の大潮流 経済学の常識をくつがえす資本主義の大転換 (atプラス叢書)世界経済の大潮流 経済学の常識をくつがえす資本主義の大転換 (atプラス叢書)
(2012/04/21)
水野 和夫

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著者の本を紹介するのは、「100年デフレ」「終わりなき危機」などに次ぎ4冊目です。どの本も、世界史的視点の経済学のことが書かれています。

本書も、資本主義が今どの方向に行こうとしているのかを示してくれるものです。参考になる点が多々ありました。それらの一部をまとめてみました。



・現在の金余り現象の背後に利子率革命(2%以下の超低金利が長期間続く状況)がある。このことは同時に、利潤極大化を行動原理とする資本主義にとって最大の危機が到来したということ

・資本が不足しているときは、資本を持っている人が有利だから、高い利息を得られる。ところが金利が低いということは、資本家の価値がないということを意味する

・日本は戦後60年かけて個人金融資産を1500兆円増やすのがやっとだった。現代のアメリカの錬金術師たちは、金額にしてその6倍、期間は5分の1、つまり30倍のスピードで儲けた

・国家(ホワイトハウス)が資本家(ウォール街)の使用人に成り下がった。クリントン政権の後半から財務長官にはウォール街の投資銀行の経営者が就任するようになったのはその表れ。日本も小泉政権あたりかから資本家の使用人になった

・世界の余剰マネーは今後新興国の近代化を先取りして、資源や食糧など基礎的物質を投機対象とする可能性が高く、そうなると資源を持たない新興国や途上国に大きな打撃を与える

・ケインズ主義者の「財政出動すれば何とかなる」の発想の根底にあるのは新自由主義と全く同じで、「頑張れば成長できる」という期待。その頑張り方が、市場に任せるか、政府がお金を出すかの違いだけで、成長という「大きな物語」を信じている点においては同じ

・これまでグローバル化が曲がりなりにも成立したのは、2割の先進国の人が、8割の貧しい人からものを安く買って高く売ってきたから。言い換えれば、貧しい8割の人がいてこその資本主義。しかし、現在進展しているグローバル化は、それを10対0にするもの

・これからは「成長ではなく、定常になる」という認識が必要。「自己責任で頑張れ」という不安を持たされる視点を切り替えることが社会の共通認識として必要

・「グロバリゼーションの諸力は、リベラル・デモクラシーを時代遅れにしようとしている」(アンソニー・G・マッグル)

・今後もっと原油価格が高騰すれば、海外の穀物を莫大な移動コストをかけてまで輸入することは成り立たなくなる。ポスト近代というのは動かない世界、「定住」がキーワードとなる

・21世紀は「長い16世紀」(利子率・貨幣・価格・賃金を中世から近代へと転換させた歴史の断絶)の繰り返しだが、異なるのは、16世紀は帝国から主権国家への移行プロセス、21世紀は「国民国家の退場」と「資本帝国の台頭」。逆向きの流れが生じている

・所得格差の背後にあるのは、企業の成長率格差。日本を代表するグローバル大企業の実質成長率は、グローバル化が加速した1975年以降、年率7.3%で成長。しかし、中小企業、非製造業のそれは逆に年率1.4%で減少。1990年のピーク水準から29%も低下している

・大企業・製造業と中小企業・非製造業の格差(二極化現象)は、先進国共通の問題。グローバル化は、国内に限定された労働市場を世界市場に拡げ、国境を越えた企業間競争を激化させたから。大企業・製造業の労働分配率の急激な低下にその事実が表れている

・グローバル化を推し進める原動力は、新興国の人々が豊かになりたいという欲求であり、先進国の成熟化による極端なまでの低利潤率の長期化(利子率革命)。すでに成熟化している先進国はポスト近代化の姿を構築していく準備をすることが必要

・もはや、景気回復は中産階級にその恩恵をもたらさないし、中産階級の人々もそうならないと不安を感じるようになる。1995年以降の景気回復は人々の不安を解消するものでなくなっている

・「ヨーロッパの歴史は蒐集の歴史。帝国とは諸国、諸民族を集めた一コレクションであり、その秩序は、蒐集者(コレクター)と蒐集物(コレクティブ)に分割されるもの」(ジョン・エルスナー)。この蒐集の手段に用いられてきたのが、資本主義でありキリスト教だった



世界的に長期金利が低下している現在、著者の意見、考え方は貴重であり、参考にすべきものだと思います。

次の時代(すでに次の時代に突入していると思われる)に対して、どう考え、どう行動するのが適切か、を教えてくれる書でした。


[ 2014/05/12 07:00 ] 水野和夫・本 | TB(0) | CM(0)

『終わりなき危機・君はグローバリゼーションの真実を見たか』水野和夫

終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか
(2011/09/06)
水野 和夫

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水野和夫氏は、内閣官房審議官を務められている方です。数年前までは、三菱UFJ証券に勤務されて、会社のホームページの執筆を担当されていました。その頃から、その内容に惹かれておりました。

水野和夫氏の著書を取りあげるのは、「100年デフレ」「超マクロ展望世界経済の真実」に次ぎ、三冊目です。経済学者であり、文明論者とも言うべき著者が、東日本大震災以後の日本をどう見ているのか興味があり、本書を読みました。

文明論から今後の世界秩序や日本経済の動向を読み解く著者の意見に感銘した箇所が数多くありました。500ページを超える大作の一部ですが、紹介させていただきます。



・「成長の時代」は終わる。ヨーロッパ史とは、膨張の歴史であり、その延長線上にあって「爆発」した近代は、成長がすべてを解決する時代だった

・自由とは、「ドルとエネルギーの消費」であったことが終焉する

・製品一単位当たりの付加価値額が悪化するということは、モノづくりが割に合わなくなったことを意味する。それでも、市場が拡大しさえしていれば、数量効果で付加価値(名目GDP)を増やすことが可能であった

・16~17世紀の「利子率革命」が、中世と近代とを画し、「陸の時代」から「海の時代」への転換期だったように、20~21世紀のそれは、近代とポスト近代を画し、「海の時代」が終わり、「陸の時代」が始まったことを示唆している

・成熟化とは、経済的側面から捉えれば、実物投資に対する利潤率が低下することに他ならない

・資本主義に依って立つ原理とは、安い移動コスト、エネルギーコストを与件として、「もっと遠く」へ行くことによって、利潤を極大化することである

・グローバルな「電子・金融空間」をウォール街が支配した「略奪資本主義」の時代において、2003年~07年まで世界の実質GDPは年平均5%成長した。これは、16~17世紀の海賊資本家の時代と同じであった

・米国は、1999年の金融制度改革法で、「電子・金融空間」において新たなるマネーを生み出すことを考えた。日本は「出ずるを制した」(人件費の削減)が、米国は「入るを量った」(売上増)

・地球全体でも、1970年前後の人口増は歴史的に見ても異例のことであり、その異例局面は終息に向っている。爆発的な人口増が期待できなくなった以上、利潤極大化のためには質的な成長を目指すしかない

・「近代とは、すべての社会的価値を『未来』に向けて再構築していく思想の営み。言い換えれば、進歩の概念と結びつく知識のみが、真の知識であった」(松宮秀治)

・「時代の変化を最初に嗅ぎ取るのは、芸術家と若者である」(シュミット、カール)

・日本は、1970年代半ば以降、地価が上昇するか、海外の景気が好調でない限り、成長できなくなったが、日本が輸出先として頼りにする米国は、80年代以降、「金融化」モデルに依存しないと成長できなくなってしまった

・20世紀は先進国全体でみれば、「モータリゼーションの世紀」であり、日本に限ってみれば、「土建国家」の世紀だった

新興国の生活水準が先進国と肩を並べるのは20年後であり、先進国と途上国の内外価格差が二対一に縮まるのは13年後

・世界総人口のうち、豊かな生活を享受している人口の割合は、1870年以降、1世紀に渡って15%前後が上限となっている。「15%対85%」は、覇権の原理として、古代社会から近代社会まで貫徹するルール

・日本は、フローで儲ける以上に、ストックで損失を被っている。成長がすべてを解決する時代は、フローの概念だけを重視していればよい。

・「もっと速く、もっと遠く」への答えは、ヨーロッパの「コレクション」にあり、「帝国理念」にある。個人コレクションやミュージアムの世界は無限の多様性の世界。グローバリゼーション教とミュージアム教と技術進歩教は、同じ発想に立つ



先進国の成長の時代が終わろうとしています。日本がその最先端を走っているようです。本書を読むと、速く・遠くも限界にきており、これ以上、空間と時間を広げることが難しくなっている感じがします。

これからの我々は、低成長時代(例えば、江戸時代の元禄以降)を参考に、生活を享受することを良しとすべきということでしょうか。


[ 2012/10/04 07:02 ] 水野和夫・本 | TB(0) | CM(0)

『100年デフレ-21世紀はバブル多発型物価下落の時代』水野和夫

100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)
(2009/04)
水野 和夫

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水野和夫氏の本を紹介するのは、「超マクロ展望世界経済の真実」に次ぎ、2冊目です。

この本は、2003年に出版したものを2009年に文庫化したものです。金融の専門家からも高く評価されています。

しかも、経済学に留まらず、文明史観的な要素も含んだ大作です。感銘した箇所が20ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・ある国でマネーを過剰に供給しても、その国でバブルが生ずる必然性はなくなった。マネーは国境を越え、バブルを生成させる。その結果、世界中で資産価格が急騰する

歴史の危機とは、システムの内部矛盾が極限に達したために起きる。すなわち、同種のシステムを自ら再生することが展望としても現実としても不可能となったために起きる

・「国家は自ら望むと望まざるとにかかわらず、16世紀最大の企業者であった。しかも、国家はまた、商人にとって重要な顧客でもあった」 (アメリカの社会学者/ウォーラーステイン)

・英国の物価は1317年をピークに、1477年まで160年の長きに渡って下落した(下落幅は62%)(ピーク時を100とすると38の水準)(年率換算0.6%の下落)。人類史の中で、14世紀は最も人口が減少した世紀。西欧の人口は年率0.34%の減少

・中世後期は資本(地主)分配率が低下した。地主の利潤額が減少し、中世の支配者である貴族にとって、没落の危機であった。それを打破するために、1500年前後に、領主制から主権国家へ転換し、荘園経済から資本主義経済に変わり、大航海時代の幕を開けた

・16世紀になると、新大陸との交易が盛んになり、経済は長期停滞期から脱し、新たな発展期を迎える。人口増に農産物の供給が追いつかない状況が150年に渡って続き、インフレーションの時代になった

・16世紀の利潤インフレで幕を開けた資本主義は、20世紀に賃金インフレで終わりを告げようとしている。資本主義は、労働者の生活水準を引き上げ、システムとして成功した

・近代国家の最も基本的な要素は領土の支配権。インターネット革命は、近代主権国家の基盤そのものを揺るがしかねない重大な意味を持っている。主権国家の中央集権的支配は終わり、ITによる帝国特有の分権的支配システムが実現することになる

・日本の資産デフレは、土地本位制の崩壊が原因。一般物価デフレはグローバリゼーションが原因。95年以降の土地の貿易財化の進展は、デフレの源泉が、グローバリゼーションで共通している

・相対的な購買力平価説が成立しなくなった時期と、貨幣の中立性が成立しなくなった時期が一致しているのは偶然ではない。途上国通貨が元来置かれていたような状況に、世界の通貨が向かい始めている

・一度目の新技術は、19世紀半ばの鉄道と蒸気船。二度目の新技術は、20世紀初頭の電気。そして、三度目の新技術は、20世紀末から21世紀初頭にかけての情報・通信技術。新技術は生産性向上をもたらし、成長率を高める

・日本の対外資産は無防備に為替リスクに晒されている。スペイン王家に巨額の貸し付けを行い、債務不履行にあって衰退したイタリア・ジェノバの銀行家の例のように、国内に投資機会が少ないからといって、単に国際分散投資をすればいいというものではない

・世界で最も金利が低い国は、最も資本蓄積に成功した国であり、同時に物価水準が高い国でもある。それは、16世紀末のイタリアであり、20世紀末の日本である

・中国は為替調整が行われることなく、世界の工場と台頭し、大競争の時代に突入して、21世紀がデフレの時代となった。中国・人民元のみならず、インド・ルピー、ベトナム・ドン、タイ・バーツもドルに対して大幅に割安である

・17世紀のヨーロッパは内外価格差が縮小した時代。1600年に約7倍あった内外価格差が1750年までに1.8倍に収斂していく過程で、フランスの通貨は4分の1になったが、物価は下落基調が続いた。通貨を4分の1に切り下げてもデフレになるという事実は重要である

・日本と中国の間にある人件費格差は25倍から30倍。また、英国から米国への「世界の工場」移転における人口格差は1.7倍で、米国から日本へは0.5倍だったが、日本から中国へは10倍の格差がある。しかも為替調整メカニズムが機能していない

・バブル崩壊後の生産性を見ると、規制産業であるほど、過去と比べて低下割合が大きい。金融保険業、鉱業、電気ガス水道業など、政府規制のウエートが高い産業の生産性低下が著しい

・マネーだけでなく、実物投資や雇用も国を越え、企業は生産を自由に選べるようになる。世界的な需給ギャップが是正されるのは、100年後。それまでは、世界的な物価・サービス価格の長期下落資産バブルが繰り返される

・世界的な超低金利時代は、先進国において実物投資に対する資本リターンが著しく低下したことを意味する。そのことは、「成長とインフレがすべての怪我を治す」近代の終わりを意味する

・近代社会とは、常に社会が進歩し、経済的側面から見ると、資本(利潤率)と国家(税収)と国民(所得)の利害が一致することで、中産階級をより多く生み出す社会。この三者の利害が一致する時代が終わり、近代の持つ基本原理が崩壊してきた



これから、新興国が発展するのと引き換えに、先進国の中産階級が崩壊していくことが顕著になります。その過程で、先進国はデフレになります。

この本で、著者は、そのデフレが100年続くと断言されています。そういう時代を、歩まざるを得ない中で、どう行動したらいいのか、どこに投資したらいいのか、判断できなければ生き残っていけません。

この本は、すでに起こっている100年デフレを生き残っていく、信頼できる羅針盤になるのではないでしょうか。
[ 2011/08/22 07:23 ] 水野和夫・本 | TB(0) | CM(0)

『超マクロ展望・世界経済の真実』水野和夫、萱野稔人

超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)超マクロ展望 世界経済の真実 (集英社新書)
(2010/11/17)
水野 和夫、萱野 稔人 他

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水野和夫氏は元三菱UFJ証券のエコノミストです。少し難解でしたが、氏の経済解説をネットでよく拝見していました。現在は大学教授をされています。

萱野稔人氏は哲学者です。以前、このブログでも「カネと暴力の系譜学」という本を紹介しました。独自の視点を持たれています。

この気鋭の経済学者と哲学者の両氏が、世界経済のこれからを熱く語り合うというのが、本書の内容です。

国家の関与と世界経済の現状について、お互いに言及されているところが数多くあり、勉強になりました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・資本主義経済の中には、すでに国家が組み込まれている。資本主義経済の分析には、国家を初めとする政治的なものについての考察が不可欠

・先進国は資源を安く買い叩くことができなくなって、モノを輸出しても儲けがどんどん減ってきてしまった。そのことが、交易条件(=輸出物価/輸入物価)の推移で如実にあらわれている

・先進国は交易条件が悪化したことで、実物経済では稼げなくなり、金融に儲け口を見出していくようになった

・16世紀から1973年のオイルショック前後までは、交易条件を有利にして市場を拡大していけば、名目GDPを増加できるといった資本主義経済の構造があった。ところが、70年代半ば以降、こうした構造は維持されなくなった

・1995年以降、国際資本の完全移動性が実現してから、アメリカは、日本やアジアの新興国で余っているお金を自由に使えるようになった。つまり、すべてのマネーがウォール街に通じるようになった

・1995年にルービン財務長官が「強いドル」政策への転換を表明した。アメリカに世界から投資マネーが入り、そのマネーを運用することで、経常収支赤字が膨らんでも、最終的に利益を出せるしくみができた。これによって、アメリカ金融帝国が成立した

・アメリカは植民地支配せずに経済的なへゲモニー(指導的立場)を確立してきた国

金融化に向かうということは、その時点で、その国のヘゲモニーの下で、生産の拡大ができなくなってしまったことを意味する

・今回のリーマン・ショックに象徴される金融危機はこれで最後とは言えず、今後、新興国で起きるであろうバブルのほうが大規模になる可能性が高い。中世から近代へと世界システムが変わった時に匹敵するような大きな構造転換があるかもしれない

・世界資本主義のヘゲモニーは、新しい空間に、誰がどのようなルールを設定するかという問題。イギリスの海洋支配が、海という空間を略奪の空間として確立して成立したように、新秩序の確立を巡る戦いである

・先進国の有利な交易条件が消滅していく中で、何とか利潤率を維持しようと思えば、自国民から略取するしかない

・先進国の資本が新興国の生産現場と結びつくようになると、先進国の国民に仕事とお金がまわってこなくなる。つまり、先進国の資本は先進国の国民を見捨てることになり、先進国の労働者は、新興国の労働者との国際競争に敗れて没落してしまう

・1870年から130年間、地球の全人口の約15%だけが豊かな生活を営むことができた。15%が資本主義のメリットを受ける定員の可能性が高い。先進国の15%の人々は、残りの85%から資源を安く輸入し、その利益を享受してきたということ

・先進国の10億人がさらに成長を目指し、後ろから追いかける40億人の人も成長を目指すことになると、資源価格は天井知らずに跳ね上がる

・2008年の金融危機で、アメリカの金融機関に莫大な公的資金が注入された。あれほど、国家による市場介入を批判してきた金融機関でも、いざとなれば国家に頼らざるを得ない

・利潤率の低下は利子率の低下としてあらわれる。イタリアのジェノヴァで金利が1619年に1.125%になったということは、労働分配率が上がりすぎて、領主が利潤を得ることができなくなったことを意味する

・近代の資本制は、封建制が機能不全になったことで生れてきた。所有権を特定の社会関係から切り離し、その下で労働を組織化する新原理を編み出したのが資本主義。国家は所有の主体であることをやめ、私的所有の空間を法的行政的に管理していく主体になった

・レーガン時代は債券でお金を集めたのに対し、1995年の「強いドル」政策のルービンは、債券以上に、株式でお金を集めた。株式の場合だと、利払いが発生しないからいい

・日本は、利潤率の低下、少子高齢化という点で、今後世界が直面すべき課題を早く背負い込んでいる。バブルが10年以上早く起こっただけではなく、バブル崩壊後に、デフレ利子率革命が続いている点でも、先進国の中で先行している

・まず財政赤字という過去の不始末にけじめをつけなければならない。経済・社会システムが大きく変わる時、過去の清算をしないと、次のシステムに移行できない。これができなければ、日本経済の復活なんてありえない

・近い将来、人民元が自由化されることになれば、今度は、日本から資本流出が起こる。これまで、資本流出が起きなかったから、日本の銀行は日本の国債を買うことができた

・中国人民元が自由化された時、財政赤字が相変わらず巨額であれば、キャピタルフライトが起きて、金利が上がり、円安になる

・これまでは、人々の欲望を刺激して需要を拡大していくのが市場のあり方だった。これに対して、現在は環境規制が市場をつくりだしている。経済活動を阻害すると考えられてきた規制が、技術の市場価値を高め、新産業を育成し、ビジネスチャンスに変わってきた

国家による規制と市場での競争との関係を問い直すことが、低成長時代の経済戦略を考える時の一つの切り口になる

・G20で世界のGDPの8割を占める。G20の新興国がGDP2万ドルまで成長すると、日本やアメリカとの内外格差が1対2になる。1対2になったところで、新しい国際的な協調体制が生れてくる

・中国の一人当たりGDPが2万ドルに達したら、共産党の独裁体制は崩壊する。GDPの民主化ライン(3000ドル)があって、そのラインを超えると民主化運動が起こる



世界経済の今後、日本経済の今後を俯瞰できる書です。おおまかなところをつかんでおくと、今後、いざという時に行動がしやすくなります。

国家と経済の関係、日本とアメリカの関係、日本と中国及び新興国の関係を注視しておくことが、ますます重要になってくることを示唆してくれる書でした。
[ 2011/04/19 08:07 ] 水野和夫・本 | TB(0) | CM(0)