スウェーデン在住で、ユダヤ教に改宗した国際弁護士の著者の書を紹介するのは、「
天才頭脳のつくり方」「
だから損する日本人」「
お金とユダヤ人」に次ぎ、4冊目です。
著者は本書で、ユダヤ人の
図々しさ、
逞しさ、
狡猾さに学ぶべきと説いています。ユダヤ人の著者だけに、説得力があります。それらの一部を要約して、紹介させていただきます。
・イスラエルはロシアと強力なパイプを持っている。その役割を担っているのは100万人ともいわれる
ロシア系ユダヤ人。ソ連時代に差別を受け、冷遇された科学者、エンジニア、学者などが大挙してイスラエルに移住している
・中国もイスラエルと軍事的に密接な関係を持っている。中国軍の近代化、ハイテク化は、イスラエルのハイテク産業がその一部を担っている。日本が知らないところで、
イスラエルと中国の官民挙げての交流が活発化している。中国企業のイスラエル企業買収も多い
・イスラエルはアメリカは言うに及ばず、中国、ロシアにとってもなくてはならない国だが、日本は中国、韓国、ロシアにとって、衰退しても一向に差し支えのない国である
・秩序や平和やルールなどというものは、国際政治上、一瞬たりとも存在しなかった。
世界は武力のみが支配するカオス。よほど狡猾に振る舞わないと、周辺強国の占領を招く
・日本は戦略的嗅覚が全く発育していない「鼻のないネズミ」。いつも遅れて決断するので、
不利な後続組になる。歴史を振り返れば、帝国主義的植民地支配もそう。後続組のくせに余計な振る舞いをするから、先頭集団から「
うるさい奴だ。黙れ」と足蹴にされた
・スイスやシンガポールのように、黙って目立たぬように
強力な戦力を蓄えればよい。それがずる賢い狡猾な国家戦略というもの
・自分が主人公であるのを放棄して、考えもせず、質問も議論も抗議もせず、他人に依存して御上に言われるまま行動する。こんな奴隷のような日本人の生き方は、ユダヤ人の目には
神の期待に背いているように映る
・能力のある者、知識のある者、技術のある者、新規事業を興す勇気のある者、これらを日本以外では「
タレント」という。タレントは資源。国内にいなければ「輸入」すること
・アップルが貯め込んだキャッシュは1370億ドル、マイクロソフトは680億ドル、グーグルは480億ドル。この3社で日本円にすると約24兆円貯め込んでいる。この3社は創業者が
ユダヤ系であったり、
イスラエルのハイテクIT産業に大きく依存している
・イスラエルはベンチャー起業が多い。ナスダック証券取引所に上場しているイスラエルの企業数はアメリカに次いで多い。
軍事国防産業からいくつもの企業が分離独立して成功を収めているのもイスラエルの特徴
・軍隊で、生きるか死ぬかという環境に置かれ、自分の力だけで考え、決断し、規律とは何かを学ぶ。精神を鍛えて物事に取り組む姿勢はビジネスの世界でも役立つ
・イノベーションは「流動性」に接触することから生まれる。流動性とは、下剋上、奇想天外が受け入れられる沸騰した社会状態。イノベーションにとって理想的な環境とは「
混沌の淵」「カオスの淵」「
厳格な規律と混沌との出会い」
・ある国がイノベーティブを生む土壌にあるかどうかは、
女性が従順か闘争的かが一つの指標になる。アメリカ、イスラエル、イギリスには闘争的女性が多い
・「
物事が永続する価値は、密かに隠されて小さく、人々が気づかない精神的な洞察であることが多い」。この哲学を日本の生活に則したならば、有名人の言うことは信用するな。テレビ、新聞、雑誌は読む価値なし。ネットのフォロワー数も価値なし、ということ
・「マネジメントはリベラルアーツである」(ドラッカー)。リベラルアーツ教育はパイオニア精神を叩き込む教育。トーマス・ジェファーソンは「単なる
リーダーになるな、パイオニアになれ」と言った
・美食・飽食は人を馬鹿にする。甲殻類の禁食を含むユダヤの食事戎律カシュルートは「
生きる目的は美味いものを食べるためではない」と戒める。日本は、テレビ番組でものを食うシーンが多い。性欲や食欲という一次欲求は、本来、人に見られたら恥ずかしいもの
・ユダヤ人はお金を軽視したり蔑視したりはしない。
お金は人生の扉を開ける大切な鍵だと考えている。欲望の充足のためにお金を稼ぐようなことはしない。あくまで「適切」に「正統」に稼ぐことを大切にする
本書のサブタイトルに、「浮かれる日本への警鐘」とあります。日本にいると、日本という国に対して主観的になります。
国際的な視野を持つ著者が見つめる日本の問題点は、かなり的をついているように思いました。著者のような真の国際人の意見をもっと聞くべきではないでしょうか。