とは学

「・・・とは」の哲学

『ショーペンハウアー・自分を救う幸福論』

ショーペンハウアー 自分を救う幸福論ショーペンハウアー 自分を救う幸福論
(2012/12/08)
ショーペンハウアー

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ドイツの哲学者、ショーペンハウアーの本をとりあげるのは、これで5冊目です。ゲーテと交わり、ニーチェやトルストイにも影響を与えた人ですが、金言集、小品集なども出版している気さくな哲学者です。

本書には、200の哲学が載っています。その中から、いくつかをまとめてみました。



・苦痛のない状態にあって、退屈がなければ、この世の幸福を達成したものと見てよい。それ以外のものはすべて幻想だから

どんなことに悲しんでいるかがわかれば、その人の幸福度がわかる。小さなことを悲しんでいれば、それだけ幸せということ

・われわれは、暖かさを求めて、無意識にストーブや日向に近づくように、心地よい優越感を与えてくれそうな相手に接近する

俗物には、富、社会的地位、権勢、威力などで他人から尊敬されたいという虚栄心や、これらのものを持った人と付き合うという虚栄心もある。彼らは、理想によって慰められず、いつも現実的なものを必要としている

・医者は人間の弱い面だけを見て、法律家は人間の悪い面だけを見る。さらには宗教家は人間の馬鹿な面だけを見る

・誰も人様をほめるのは、自分にもそれができる見込みがあると思う範囲に限られる

・自分の欠点に気づくには、その同じ欠点を他人が持っているのに気がつき、それを心の中で非難・批判するのが適切なやり方。自分を矯正するには鏡が必要

・他人は、なるべく賞賛したくないから、自分で自分を賞賛する心境に達した人が幸せ

・人間の金銭上の満足は、要求の強さと所有する財産との比率によって決まる。要求が小さければ、財産がなくとも満足は得られる

・精神的能力の高い人は、自然に非社交的になる

・平凡な人たちは、すぐに仲間になるが、優れた人はそうはいかない。しかし、優れた人たちも、似たところがある相手を見つけると、嬉しくなるもの

・人の意見には反論しないほうがよい。変なことを信じている人の考えを変えようとしたら、何年経ってもケリがつかない。人の感情を害するのは簡単だが、人を矯正するのは、相当難しい

・人に対しては、寛大すぎても優しすぎてもいけない。交際上の優位を持つには、他人を何ら必要としないこと、そしてそういう素振りを見せること

・知的でない楽しみはすべて低級である。その目的が何であっても、行きつくところはすべて、願望、期待、懸念、達成などへの欲望である

・青年期には観察力が、老年期には思考力が強く出る。したがって、青年期は詩の時期であり、老年期は哲学の時期である

・一生の終わりごろは、人が仮面舞踏会の終わりに仮面を取るのと似たようなもの。自分が一生の間、接触してきた人たちが、本当はどのような人間であったか、今となっては明らかとなる

・人々がふつう運命と言っているものは、たいていは自らまいた種のことである

・たいていの人は、人生を振り返ってみたとき、自分が一時しのぎの連続で生涯を暮らしてきたことを発見する

・われわれが生きていて喜びを感じるのは、何かに向けて努力・追求している時か、純粋に知的活動をしている時だけ

・他人は、苦痛や窮乏や危険や困難に陥っているときだけ、われわれの関心を呼び起こす



ショーペンハウアーは、裕福な商人の息子として生まれ、父親の死後、遺産を継ぎ、一生涯独身を貫いた人です。社交的だった親に反して、孤独を愛する人でした。

その鋭い人間観察力は、そういったところから生まれたのかもしれません。ちょっと人生を振り返ってみたくなったときに、ショーペンハウアーの書を読んでみたくなります。


『読書について』アルトゥール・ショーペンハウアー

読書について (光文社古典新訳文庫)読書について (光文社古典新訳文庫)
(2013/05/14)
アルトゥール ショーペンハウアー

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著者に関する本を紹介するのは、「ショーペンハウアーの言葉」「幸福について人生論」「ショーペンハウアー大切な教え」に次ぎ、4冊目です。本書は、「本を読むこと」と「自分で考えること」がテーマです。

あくまで、自分で考えることの手段が読書であるというのが著者の主張です。哲学者の読書に対する考え方に、納得できるところが数多くありました。それらの一部を要約して紹介させていただきます。



・いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに鵜呑みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識のほうが、はるかに価値がある

・学者、物知りとは書物を読破した人のことだが、思想家、天才、人類に進歩をもたらす人とは、世界という書物を直接読破した人のことだ

・真実と生命は、もともと自分の根っこにある思想だけに宿る。本当に理解できるのは、自分の考えだけだから。本から読みとった他人の考えは、他人様の食べのこし、見知らぬ客人の脱ぎ捨てた古着のようなもの

・人生を読書に費やし、本から知識をくみとった人は、たくさんの旅行案内書をながめて、その土地に詳しくなった人のようなもの

・物書きには、テーマがあるから書くタイプと、書くために書くタイプの二種類がある。第一のタイプは思想や経験があり、それは伝えるに値するもの。第二のタイプはお金が要るので、お金のために書く。書くために考える

・物書きには三通りある。一番目は考えずに書くタイプ。記憶や思い出、あるいは他人の本を借用して書く。二番目は書きながら考えるタイプ。書くために考える。三番目は書く前からすでに考えていたタイプ。考え抜いたからこそ書く。このタイプはめったにいない

・評論雑誌は、誠実で清廉潔白、まれにみる知識と比類なき判断力を兼ね備えた人物によって書かれたものであらねばならない

・悪書をほめちぎるにせよ、良書をこきおろすにせよ、匿名批評家は、堂々と顔を見せて悠然と歩く者に、覆面し変装して、突然襲いかかる「ならず者

・匿名批評家の愚かしくあつかましい言動は、国王のように「われわれ」と一人称複数形で話すこと。一人称単数形にするばかりでなく、「小生」という縮小詞を用いるべき

・すぐれた文体であるための第一規則は、「主張すべきもの」があること。これさえあれば、やっていける

気取った文体で書く者は、ごてごて飾り立てる者に似ている。ジェントルマンはどんなに質素な身なりでも恐れない。気取った文体は、凡庸な脳みその証である

・真理はむきだしのままが最も美しい。表現が簡潔であればあるほど、深い感動を与える。そうすれば、聞き手は雑念に惑わされずに、スッと真理を受け取ることができる

・無知は人間の品位を落とす。しかし、人格の下落が始まるのは、無知な人間が金持ちになったときである

・ひっきりなしに次々と本を読み、後から考えずにいると、せっかく読んだものも、ほとんどが失われてしまう。精神の栄養も身体の栄養と変わりなく、吸収されるのは、摂取した食物のわずかにすぎない。残りは蒸発・呼吸作用などによって消えていく

大衆に大受けする本には、手を出さないこと。愚者のために書く連中は、いつの時代も俗受けするのだと達観すること

凡人の脳みそは、どれもこれも似通っている。全員、一つの同じ鋳型からつくられている。同じ場面に遭遇すると、誰もかれもがまったく同じことを思いつき、さらに各人のさもしい魂胆が加わる

・自分が興味あるもの、つまり自分の思想体系や目的に合うものしか自分の中にとどめておけない。目的なら誰でも持っているが、思想体系めいたものを持つ人はごくわずか。思想体系がないと、何事に対しても、公正な関心を寄せることができない

・「反復は勉学の母である」。重要な本はどれもみな、続けて二度読むべきだ。二度目になると、内容のつながりがいっそうわかるし、結末がわかっていれば、出だしをいっそう正しく理解できる



思想家としての自負と世間への愚痴が満載の書ですが、おおむね、読むことと考えることの本質が描き出されているように思います。

「読むこと」「考えること」「書くこと」。つまり、インプットだけではだめで、最良のアウトプットこそ、人生の目的にすべきであると、著者は述べているのではないでしょうか。


『ショーペンハウアー大切な教え』アルトゥル・ショーペンハウアー

ショーペンハウアー 大切な教え (智恵の贈り物)ショーペンハウアー 大切な教え (智恵の贈り物)
(2010/09/01)
アルトゥル ショーペンハウアー

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ショーペンハウアーの本は、「ショーペンハウアーの言葉」「幸福について人生論」に次ぎ、3冊目です。

日本で言えば、江戸時代末期のころのドイツの哲学者です。お金、権力、名誉、欲望など、人の幸福に関する哲学が多く、同時代のヘーゲルとは違って、一般人でもなじめる哲学者です。

ニーチェにも大きな影響を与えたショーペンハウアーの250近くに及ぶ大切な教えの中から、その一部を要約して紹介させていただきます。



・富とは、あり余る贅沢であり、幸福に役立つことはほとんどない。世の中には、精神的な教養に欠け、知的職業にふさわしい客観的興味を持つことができないために、自分が不幸だと感じている金持ちが大勢いる

朗らかさは、即効性のある直接的な報酬。言ってみれば、幸福という現金そのものであって、他の一切の恵みのような銀行の小切手ではない

・輸入に頼らなくていい国がどこよりも幸福な国であるように、内面が十分豊かで、外部の力を必要としない人ほど幸せな者はいない

・物事を制限することが、幸福への道である。人間の幸福は、視野、活動、世の中の接点といったものの範囲が制限されているほど大きい

・人が、努力を惜しまず、幾多の困難や危険に遭遇しながら、手に入れようとしているものは、他人からの評価を上げることを目的としている。地位、称号、勲章はもちろん、富、学問や芸術までもが、人からの尊敬を得るためのものである。愚かで、何とも嘆かわしい

・人が誇りを持てるのは、自分には卓越した能力特別な価値があるのだという揺るぎない確信を得たときだけである

・自分の生涯の仕事に少しでも重要性や価値があると思うなら、折にふれて、その設計図、すなわち概要の縮図に注意を向けることが必要である

・大いなる知性の持ち主は、この世界に生きていても、本当の意味で、そこに属しているわけではない。幼い頃から、ほかの人たちと自分がかなり異なっていると感じている

・賢明な人は、苦痛や不快感から解放されようと努力し、できるだけ困難に遭遇せずにすむ、静かでゆったりした、つつましい暮らしを求める

・私たちの抱える苦悩のほとんどは、他人との関わりから生じるものである

・うぬぼれの強い者はよくしゃべり、誇りを持っている者は寡黙なものである

・偉大なことを目指す者は、後の世界に目を向け、後世のために確固たる自信をもって、自分の仕事を仕上げる

・思ったことをすぐに話したり、人の言うことを鵜呑みにしたりしてはいけない。むしろ、道徳面でも教養面でも、他人の言葉には多くを期待しないほうがいい

・人生をうまく切り抜けるには、先を見越すことと、大目に見ることの二つが効果的。先を見越す細心さがあれば、損失や損害を防ぐことができる。大目に見る寛容さを持てば、争いから逃れられる

気取りとは、必ず相手に軽蔑の念を起こさせる。気取りとは、ごまかしであり、ごまかしは、恐怖心から出るものであり、臆病な行為である

・もし、誰かが嘘をついているという疑いを抱いたなら、すっかり信じているように見せるといい。相手は大胆になって、さらに嘘を重ね、熱弁を振るううちに、ぼろを出す

・無知で裕福な者は、快楽のためだけに生き、獣同然の暮らしを送る。この手の人間は、富と余暇を有意義に使っていない点でも非難されるべき

・高潔な人格と優れた精神の持ち主は、若い時に、世渡りの知恵や人間についての知識に欠けていることをさらけ出してしまうことが多く、だまされたり、迷わされたりしやす。それに対して、平凡な人間は、ずっと早く、巧みに世の中に順応する

・だまされて失った金銭ほど、利点の大きな使い方はない。そのお金で、用心深さを買ったということだから



知性を磨いて、自由に、そして快適に生きようというのが、ショーペンハウアーの一貫した考え方です。

幸福に生きるには、まず頭と精神を鍛えることであり、決して、富を築くことではないということなのかもしれません。


『幸福について-人生論』ショーペンハウアー

幸福について―人生論 (新潮文庫)幸福について―人生論 (新潮文庫)
(1958/10)
ショーペンハウアー

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ショーペンハウアーは「ショーペンハウアーの言葉」に次ぎ2冊目です。ショーペンハウアーは、西洋の哲学者には珍しく、東洋的な思想を持ちあわせているので、日本人の心にも響きます。

この本は、1788年生まれのショーペンハウアーが63歳のときの晩年の作です。少々難解でしたが、内容を吟味しながら、読んでいけば、十分に理解することができると思います。

1958年に出版された本ですが、版を重ねて、ずっと売れているロングセラーです。この本の中で、勉強になった箇所が25ほどありました。「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・健康はいっさいの外部的な財宝にまさる。健康な乞食は病める国王よりも幸福である

・才知に富む人間は、独りぼっちになっても、自分の持つ思想や想像に慰められる。愚鈍な人間は、社交、芝居、遠足、娯楽と目先が変わっても退屈する

・金持ちに不幸な思いをしている人が多いのは、精神的な仕事をなしうる興味を持ちあわせていないから

人としてのあり方のほうが、人の有するものに比して、幸福に寄与することが大である。にもかかわらず、人間は精神的な教養を積むよりも、富を積むほうに千万倍の努力をささげている

・美は事前に人の歓心を買う公開の推薦状である

・人間の幸福に対する二大敵手が苦痛と退屈。困苦と欠乏が苦痛を生じ、安全と余裕が退屈を生ずる

・内面の空虚から生ずるのが、社交や娯楽や遊興や奢侈を求める心。これらのために多くの人が浪費に走り、やがて貧困に落ちる。こうした貧困を最も安全に防ぐ道は、内面の富、つまり精神の富である

・才知に富む人間は、安静と時間の余裕を求め、隠遁閉居を好み、孤独をすら選ぶ

・自分自身にとって、一番よいもの、一番大事なものは自分自身であり、一番良いこと、一番大事なことをしてくれるのも自分自身である。享楽の源泉が自分自身の内に得られれば得られるほど、幸福になる

対外的な利益を得るために、対内的な損失を招く。すなわち、栄華、栄達、豪奢、尊称、名誉のために自己の安静と余暇と独立とを犠牲にする。愚の骨頂である

・人間は三つの享楽の中から自己に適したものを選ぶ。第一は再生力の享楽(飲食、休息、睡眠)。第二は刺激感性の享楽(舞踏、乗馬、狩猟、運動競技)。第三は精神的感受性の享楽(考察、観賞、詩作、絵画彫刻、音楽、読書、瞑想、発明、哲学的思索)

・煩悩に動かされなければ、退屈で味気ない。煩悩に動かされれば、苦痛になる。それ故、有り余る知性を与えられた人だけが、幸福な人間になる

・現実生活の他に営むべき知的生活には、下は昆虫、鉱物、貨幣をただ蒐集して記録する仕事から、上は文学や哲学の最も優れた業績に至るまで、無数の段階がある。こうした知的生活は退屈によって生ずる有害な結果を予防する

・天才と呼ばれる精神的卓越の極致にある人間は、何ものにも妨げられずに自己を相手とし、自己の思想と作品が痛切な欲求となり、孤独を歓迎し、自由な余暇を無上の財宝とし、それ以外の一切はむしろ無用なもの、厄介なものと考える

精神の足跡を全人類の上に刻みつけることを使命とするとき、幸不幸は唯一つしかない。それは、自己の素質を完全に伸ばして、自己の作品ないし事業を完成することができるか、できないかということ。それ以外は自分にとって取るに足らぬことばかりである

・俗物には俗物の虚栄心の享楽がある。富か位階か、権威や威力などで他人を凌ぎ、それによって他人に尊敬されること。俗物が求める相手は、精神的欲望を満足させてくれる人でなく、肉体的欲望を叶えてくれる人

・富や権勢こそ唯一の真の美点と見て、その点で傑出したいと願っている人間は、人物評価や尊敬をもっぱら富や権勢によって測ろうとする

・医薬は病人のみ、毛皮は冬季のみに役立つもので、唯一つの欲望を満足させるだけ。金銭だけは具体的に一つの欲望だけに合致するものでなく、欲望全般に合致する。金銭を愛することは自然の勢である

・官職、称号、勲章はもとより、富、学問、芸術までが、他人からの尊敬を少しでも大きくすることが努力の究極の目的になっている。これこそ人間の愚かさを証明するもの

・誇りの中でも最も安っぽいのは民族的な誇り。民族的な誇りのこびりついた人間には、誇るに足る個人の特性が不足している。個人の特性が不足していなければ、何もわざわざ自分を含めた幾百万の人間が共通に具えている要素に訴えるはずがない

・人間精神の最高級の業績は、冷淡に迎えられ、長い間冷遇される。やがて高級な精神の持主が近づいてきて、この功績に共鳴し、声価を顕揚する。この経路は、人間誰しも自分と同質的な事物しか理解し、評価することができないことを一貫して教える

・名声は得るのは難しいが、維持するのはやさしい。この点で名声は名誉と反対である。名誉は一度でもくだらぬ行為をすれば失われて二度と回復できなくなる

・アリストテレスが表明した「賢者は快楽を求めず、苦痛なきを求める」という命題が、処世哲学の最高原則だと考える

・すべて物事を局限するのが幸福になるゆえん。我々の限界、活動範囲、接触範囲が狭ければ、それだけ我々は幸福であり、それが広ければ、苦しめられ、不安な気持ちにさせられる

・自己に満足し、自己がすべてであると言うことができれば、それこそ幸福にとって最も好ましい性質。幸福は自己を愛する人のものである

・「自らを低くして人に交わる」意味は理解できるが、自己の本性の恥ずべき部分を介さなければ付き合えないような仲間は、避けたい気持ちになる



日本の江戸時代末期に、ショーペンハウアーは幸福について真剣に考えていました。それを現代の日本人が読んでも、少しも古くないと思えるのが驚きです。

この本は、古今東西、老若男女の幸福を考える上で、欠かせない古典の書だと思います。

『心に突き刺さるショーペンハウアーの言葉』

心に突き刺さるショーペンハウアーの言葉心に突き刺さるショーペンハウアーの言葉
(2008/03/25)
アルトゥール・ショーペンハウアー

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丹波篠山の学生寮歌であった、デカンショ節の「デカンショ」というのは、「デカルトカントショーペンハウエル」であると、昔、親から聞いたことがあります。

デカルトとカントは難しいながらも、その書物を少し読んだことがありますが、ショーペンハウアーに関しては、全く読んだことがありませんでした。

今回、この「ショーペンハウアーの言葉」を読んで、「ショーペンハウアーの思想が釈迦の考え方とよく似ており、東洋的であること」「論理的というより、どちらかと言えば感覚的な人」ということがわかりました。

孤独を愛し、生涯独身を通したショーペンハウアーの言葉は、現代日本人の心に突き刺すように思います。

この本の中で、共感した箇所が25ほどありました、「本の一部」ですが、紹介したいと思います。



・欲望の根底にあるのは、人間の本性からつきまとう、不足、欠乏、苦痛である。その一方で、欲しいものが得られ、欲望が減退し、欲望の対象がなくなると、虚しさと退屈さに襲われる。人の生活は振子のように、苦痛と退屈の間を行き来する

・他人に比べて自分が幸福な状態にあることを認めることで得られる喜びは、実は積極的な悪意の源である

・元来怠惰である人間は静止にあこがれながらも、絶えず前進しなくてはならない。前進を強いる力が停止を許さないからだ

・世間でいわれている幸福は、これに先だって、苦しみや欠乏があり、また幸福を得た後も、後悔、苦悩、虚しさ、飽満の感覚につきまとわれるもの

・性欲は生きんとする意志の最も完全な表現であり、その最もはっきりした形態である。このことは、そもそも個人が性欲から生まれ、性欲が人間にとって他のすべての欲望に優先していることからも明らか

・幸福な結婚など滅多にない。それは主目的が現在の当事者ではなく、将来の世代にあるというのが、そもそも結婚の本質だからである

・動物に同情することは、その人の性格の良さと完全に一致している。動物に残忍な人はけっして良い人ではない

・大がかりな事物に取り組む学問は、なかなか最終目標に達することができないが、芸術はいたる所で目標に達している。なぜなら芸術は特定の対象を世界の奔流から取り出し、この個物だけを単独に分離して取り組むから。芸術は個物によって表現される

・凡人の知性が個々の人に奉仕する責任があるのに反し、天才の知性は人類全体へ奉仕する責任がある。凡人は三分の二が意志、三分の一が知性から成るのに対し、天才は三分の二が知性、三分の一が意志から成る

・人間嫌いと孤独を愛することは、互いに交換できる概念である

朗らかさだけがほんものの貨幣。他のものはすべて手形。なぜなら、朗らかさだけが現時点ですぐにも人を幸福にさせるから

・最大の愚挙は肉欲の充足や一時的な快楽、金儲け、昇進、勉学、名声のために、おのれの健康を犠牲にすること。健康第一、他のことはむしろないがしろにすべきである

・孤独にされると、愚者はたとえ美服をまとっていても、自分の貧しい個性の重圧から脱却できず、ただ溜息をつくばかり。すぐれた素質をもつ者は、孤独な貧しい環境にあっても、自分の思想を生かして充実した生活をおくることができる

・人は、おのれの楽しみの源泉をおのれ自身のなかに見出すことが多ければ多いほど、それだけますます幸福になる

親譲りの財産は、それが高尚な種類の精神的能力を備え、金儲けとは無縁の物事に取り組んでいる人に渡ったとき、はじめて最高の価値を持つ。この種の人々は運命に二重に恵まれることになり、おのれの素質を十分に発揮できるようになる

・生きていくために最も大切なのが健康であり、次いで、生活を支える手段、つまり安心して使える収入である。これに引きかえ、名誉、栄光、位階、名声などは、これらの本質的財産と競争できない

・自負はおのれの内部から発し、おのれ自身を直接評価すること。これに反し、虚栄心はおのれ自身への高い評価を外部から、つまり間接的に得ようとする努力

・名誉とは客観的には私たちの価値についての他人の意見であり、主観的には他人の意見に対する私たちの恐怖である

・後世まで轟く名声は、種子から始まってゆっくりと成長していく樫の木に似ている。一方、はかない名声は一年間ですぐ成長する植物であり、誤った名声にいたっては、素早く伸びて、いち早く滅び去る雑草の類である

・誰でもおのれをこえて見ることができない。すなわち人は誰しも自分自身と同じ大きさで他人を見ている。それというのも人は自分の知性の尺度に従って他人をとらえ、理解することができるだけだからである

・大多数の人々は主観的であるため、自分自身以外のものには一切関心がない。したがって、すべてについて自分自身に関連づけて考える。個人的に関わりがあれば、彼らの注意をひき、とらえて離さない。彼らの利益や虚栄心に反すれば、間違っていると見なされる

・自分の欠点を知るためには他人の欠点に注意して、これを心の中で批判するのが最も適切な方法である。私たちは、自分自身を改良するためには鏡を必要とする

・社交界では地位や富が常に尊敬のまとになりうる反面、精神的卓越さにそれを期待してはならない。最も恵まれた場合でも無視されるだけである



ショーペンハウアーは、「健康」と「少々のお金」と「知的探究時間」があれば、幸福であり、地位や名誉を煩わしいものと述べています。

「人の生活は苦痛と退屈である」「世間の煩わしさから逃れ、孤独を楽しむ」という考え方は吉田兼好の「徒然草」にも通じるような考え方です。

とにかく、この本は、将来、静かに暮らしたいと考えている方にとっては、心の支えになるのではないでしょうか。