人間誰でも、泥をかぶらないといけない時があります。でも、かぶってしまってはいけない泥もあります。本書は、どういう泥ならかぶったほうがいいのか、泥の上手なかぶり方が記されています。
この「泥」という現実を検証している書を、今まで見たことがありませんでした。著者は元衆議院議員秘書です。ドロをかぶるのが仕事のような経験をされてきた方です。その貴重なノウハウの数々をまとめてみました。
・絶対にかぶってはいけないドロとは
違法行為(収賄、背任など)になるもの。そんなことを促してくるドロかけ屋に注意しなければならない
・ドロをかぶる最大のメリットは、相手に
恩を売れること
・ドロをかぶらされるということは、ドロをかぶせるほうと比べて、立場が弱くなる。クビを切られるかもしれない。そんな立場に追い込まれないためにも、ドロをかぶるときは言い訳をしてはいけない。上司に恩を売るチャンスなので、徹底的にかぶってあげること
・成功したときに出世したり、給与が上がったり、評判が死ぬほど上がるようなドロは大歓迎
・「うまくいっていない新規事業のリーダー」「設立以来、
赤字が続く部門の責任者」「
不祥事の後始末を託されたリーダー」。この種のドロをかぶって、うまく事態に対処できれば、能力を高く評価される。プロジェクトを黒字化することだけが、飛躍への道ではない
・ドロをかぶるときに一番気をつけるのが「客観的視点」。かぶったドロが
誰の目から見ても「ドロ」でなければならない
・ドロかぶりには「愛嬌」も大切。愛嬌は、会社という集団の中で、警戒心、敵対心、嫉妬心をもたれないための重要なスキル
・上司にとって「カワイイやつ」「気になるヤツ」になれば、変なドロをかぶる確率はかなり低くなる。馬が合わない上司にも、積極的に声をかけること
・自分が失敗したときは「すみません」「自分のせい」、お酒の席でアピールしたいときは「うまくいかない」「教えてください」、上司が得意げに自慢したときは「さすが」「ダメなんです」。こういった
お世辞の定型句は、コツをつかめば、簡単に口から出てくる
・文句を言われる前に、自分から謝りに行くこと。
出鼻をくじかれると、本来、怒り爆発の状態だったとしても、矛をおさめざるをえないのが、人の情
・クレーム処理は代表的なドロかぶり。このクレーム処理の基本形は、クレームを言ってくる相手に「自分が
イジメているみたい」と思わせること
・ドロかぶりが下手な上司は、
部下に尻拭いをさせがち
・「手のひらをかえす」タイプ、つまり、
信用できない人物には「口が軽い」「他人の批判を平気でする」「うわべだけを取り繕う」といった特徴がある。このような人を日ごろから特定しておくこと
・ドロかぶりは、もし一歩間違うと、すべてを失ってしまう危険な賭け。周囲の人物が信頼に値するか、注意深く見ておく必要がある
・会社生活ではババともいうべきドロは必ずある。基本的に
ミスをしたくない上司が上にいればいるほど、ババの数は増える
・会社の体質を見抜くのは簡単。査定が減点方式の会社では、ババが致命的な傷となる可能性が高い。そこでババを出されたときは、「お引き受けできません」と明確に拒否すること。失敗確率の高いババが振られた時点で、あなたは
会社から軽視されていることになる
・立場が偉くなればなるほど、建前で話すのが普通。ペラペラ本音を言うのは中間管理職まで。上に立つ者が、建前で話を通すのは、それが理論武装になるから
・出世する人は、何らかの
傷を持っているもの。だから、上層部の信用を勝ち取り、上にあげられるというわけ
・会社がドロをかぶせようと考えている人物は、自然と高位に出世していくもの。逆を言えば、
ドロをかぶらない社員は、いつまでたっても出世しないままということ。ドロかぶりは究極の出世術
議員秘書として、ドロをかぶってきた著者の見解は、「
義理人情のある会社では、ドロをかぶることが出世の道」となるが、「
ドライな会社では、ドロをかぶらずにうまく逃げることが大事」ということです。
いずれの場合も、ドロに対する自分の考え方を磨き、場と人を見抜き、ドロに対処することが組織を生き抜く上で、非常に重要です。その助けとなる書です。